こんばんは!
日生学園第二高校ラグビー蹴球部 “ラグビー魂” です!
天気予報どおり、今日はこの冬一番 (そう感じるほど) の寒さでした・・・。
積もることはなかったものの、1日中小雪がちらつく厳しいコンディションの中、生徒たちは
1500m走クロスカントリー×2本 (合計3km)をこなし、その後は
ウェイトトレーニングへ。
顧問 西川は担任クラスの
沖縄研修旅行の準備のために放課後がつぶれ、練習には参加できずじまいでした・・・。
そんな訳で、今日の
“ラグビー魂” は約2か月ぶりの・・・
“西川先生のビデオ観戦記”
第44回 全国大学選手権大会 決勝
早稲田大学 vs. 慶應義塾大学
下馬評どおりに勝ち進んできた大学選手権優勝の大本命、
顧問 西川の母校
早稲田大学と、選手権に入ってから着々と力をつけながら勝ち上がってきた
慶應大学。
11月に対抗戦グループの試合で対戦した時には、FWのパワーと総合力に勝る
早稲田が
40-0 と完封勝ちしていたので、『差は詰まったかもしれないが、それでも
早稲田有利』 というのが大方の予想。
慶應サイドは、何もできなかった対抗戦での対戦時の反省から、
エースWTB
山田選手をフィニッシャーからチャンスメーカーとして使うようになり大学選手権ではブレイク。この決勝戦でも、いかに
山田選手がボールを数多く持ってチャンスを作れるか、そのために劣勢のFW陣がどれだけ踏ん張れるかにゲームの行方はかかっていました。
しかし、直前の準決勝で
山田選手が足首を負傷し、決戦直前まで別メニュー調整だったという情報も・・・。
加えて、前日から降り続く雨と強風、気温も下がるコンディションでは 『FW勝負を避けてBK展開に活路を見出したい
慶應には不利』 という見方が直前になって大勢を占めていました。
しかし、私は全く違う見解を持っていました。
慶應WTB 山田選手については、出るという決断をした以上は言い訳は許されないし、出れるコンディションならば
早稲田にとって危険な選手であることに変わりはないレベルの選手だと確信していました。
天候についても、氷雨の影響で
早稲田サイドのBK展開が制限され、FW戦オンリーになると
慶應DFとしては的が絞りやすくなり、
慶應伝統の
“魂のタックル” が炸裂すればという条件付きながら拮抗した展開になるだろうと思っていました。
慶應サイドとしては、
早稲田にFW戦で上回られた状態で得点力のある
早稲田BK陣に走られるというのが一番嫌な展開なわけで、そういった意味で天候は
早稲田よりも
慶應に味方したと言えるでしょう。
まあ、結果論と言われればそれまでですが・・・。
とにもかくにも、私はあえて情報を遮断し結果を知らない状態で、生観戦のつもりでドキドキしながらVTRを観ました。
ゲームの方は、予想どおりの
早稲田にとっては悪い流れの展開に・・・。
前半、風下で地域戦略に苦しみ、思ったよりも全然ミスは少なかったもののFW戦中心の展開に
慶應の
“魂のタックル” が炸裂。チャンスは作るものの無得点のまま前半も半分を過ぎようとしていました。
ようやく前半18分。
慶應陣深くで得たスクラムを強力FWが意志統一して押し込み、
No.8 豊田選手がトライ。GKも決まり
7-0 と先制。
選手たちの試合前・試合中の心理状態は窺い知れませんが、有利と思われている試合が拮抗するのは嫌な感じがして当然でしょう。しかし、全くぶれることなく自分たちのやるべきことを遂行し、きっちり先行するあたりは、心身ともによく訓練されているなという印象でした。
DF面でも
早稲田はFW・BKともによく前に出て、
慶應にプレッシャーをかけ続けていました。
スクラム劣勢の
慶應にとって生命線としなければならないはずのラインアウトでも、
FL 覺來選手の活躍で
早稲田が数度にわたって
慶應ボールを奪取するなど優位に。
BK陣も、おそらく日本一速く前に出ているであろうラインDFで、タレント揃いの
慶應
BKをシャットアウト。キック攻撃に対しても、大黒柱の
FB 五郎丸選手を中心に、多少のミスはあったものの、ほぼ盤石の構え。
リードを広げることもできませんでしたが、相手に取られそうになる心配もほとんど感じられない安定感ある展開でした。
ようやく
慶應が後半37分にPGを返し、
7-3 でハーフタイム。
点差は拮抗しているものの、地力の差はハッキリ。天候の影響でゲーム展開を絞った
早稲田の強いコンタクトに対し
慶應も
“魂のタックル” で前半40分は何とか対抗していたが、ボディブローのように効いてくる後半も持ちこたえられるかどうか・・・。
後半の序盤までは前半と同様の展開。
しかし、地力の差が徐々にではあるが、さらにハッキリと。実際にタックル数をカウントしたわけではありませんが、明らかに
慶應のミスタックルが増えてきた印象。
早稲田サイドの安定した試合運びも大きなプレッシャーとなって、
慶應を精神的に追い詰めつつあるように見えました。
後半16分。
早稲田が
慶應陣22mライン付近左のスクラムからサイドアタックのサインプレー。突破力のある
No.8 豊田選手がオープンサイドに持ち出し、自分で突破すると見せかけて相手
SO 川本選手を想定通りに引きつけたところで、背後から飛び出してきた
SH 三井選手にノールックパス。
三井選手も、
川本選手が釣り出されたことでできたスペースに侵入し、これまた想定通りに上がってきた
CTB 長尾選手にラストパス。そのまま
長尾選手が走り切り、最初から最後まで
慶應DFに文字どおり “指先も触れさせない” 見事なトライ!
14-3 とスコアが開いたこと以上に、完璧なプレー展開で完璧なトライを決められたことで
慶應は意気消沈したように見えました。
慶應は選手交代に活路を見出そうとしてか、直後に2人を交代。今シーズン負傷をおして出場し続けるゲームキャプテンの
CTB 中浜選手をここで交代させたのは精神的支柱なだけに不可解。それほどまでに膝の調子が良くなかったのか・・・?!
慶應はさらに後半26分にエネルギッシュな
SH 花崎選手を投入。この交代は後々リズムを生み出すことに・・・。
それでも直後の後半27分。それまで耐え続けた
慶應FWがついにモールを押し込まれてトライを献上。
19-3 となって勝負あり。
早稲田は今季こだわってきたモールドライブで勝負を決めて、意地を示したかたち。
後半30分には
慶應意地のPGで
19-6 と2トライ2ゴールで逆転できる圏内につける。
この時、PGを狙うという決断に客席からは
『エーッ・・・ (トライを狙って攻めろよ・・・) 』 という非難するような失意のどよめきが・・・。観客の気持ちも理解できなくはないが、本気で勝ちを狙うならば2トライ2ゴールで逆転できる13点差以内につけることはセオリー。ましてや
慶應には、一発逆転を可能にしてくれそうな絶対的な
エースWTB 山田選手がいるので当然の判断でしょう。
しかし、何か
慶應サイドに虚しさのようなものが漂っているように感じられて仕方ありませんでした。形だけ追いかけようとする体裁を整えただけで、本気の本気で逆転を信じて狙っているといった狂気のようなものが全く感じられませんでした・・・。
特にそう感じたのは、PG成功直後のKOで
早稲田FB 五郎丸選手がデッドボールラインを越えてしまうミスキックをして得た
慶應ボールのセンタースクラムからの一連の流れ。
ここから
慶應はエネルギッシュな
SH 花崎選手の好プレーもあって前進し、千載一遇のBK展開のチャンスを作り出します。しかし、ここで
慶應SO 川本選手は何の工夫もなくオープンサイドへのラインキックを選択・・・。
あくまで私見ですが、残り時間10分を切った時間帯で2トライ2ゴールを狙いにいかなければならなかったこと、PGを決めて追い上げ態勢を整えた直後で
早稲田のミスからチャンスを得るという絶好の局面だったこと、FW戦が劣勢でラインアウトもターンオーバー連発であったことを考えれば、キックでの安易な地域の前進ではなく、勝負を狙ったBK展開からの連続攻撃に活路を見出すべきではなかったでしょうか。
しかもこのキックも
早稲田の激しく前に出るプレッシャーにさらされてあまり効果的なものにはなりませんでした。このボールに対する
慶應サイドのチェイスも甘く、そこから
早稲田の逆襲を許し、ラインブレイクしてきた
早稲田No.8 豊田選手へのタックルも甘く、地域的にも大きく後退してしまう結果になりました・・・。
逆に
早稲田は、昨年の決勝戦で
関東学院大学に敗れた悔しさからか、最後の最後までこだわり全開の徹底した戦いぶり。そこには1年間の取り組み・鍛錬に対する意地と誇りが静かなる狂気となってたちのぼっているようにすら感じられました。
最後も、後半35分。今季徹底している速いプレッシャーDFで
慶應SO 川本選手のノックオンを誘い、グラウンド上にいる選手の中で一番の巨漢
早稲田LO 橋本選手が、誰よりも素早い反応でボールを拾いそのままトライ。このシーンに今季の
早稲田のこだわりが凝縮されていたように思います。
最終スコア
26-6。
当初の予想どおり、悪天候は
慶應に味方してスコア上は拮抗した展開になりましたが、その悪条件すら跳ね返すあらゆる面で
早稲田の完勝でした。これで天気が良ければ、もっと
早稲田BKが走り回り、もっとスコアが開いていたであろうと確信できるほどに・・・。
慶應も粘ったものの、頼みのタレントBK陣が不発。
エースWTB 山田選手もあまり見せ場を作れないままに終わりました。
立派だったのはその
山田選手。泣き崩れることもなく、最後まで胸を張って勝者
早稲田を祝福してグラウンドを去っていきました。
表彰式が終わり、
早稲田は日本一になった時にしか歌うことが許されない第2部歌
『荒ぶる』をグラウンドサイドで熱唱。
OBである私も感無量で、ビデオ映像の前にもかかわらず一緒に口ずさんでいました・・・。