こんにちは!
日生学園第二高校ラグビー蹴球部 “ラグビー魂” です!
今日は久しぶりに・・・
“西川先生のビデオ観戦記”
今回のゲームは、先週の土曜日に行われた
IRB パシフィックネーションズカップ(通称 PNC)
Australia A vs. Japan
この大会、
日本は昨年度、
1勝4敗で
参加6チーム中 5位という成績。
今回の相手
オーストラリア Aには、
10-71のスコアで惨敗しています。
その後、昨年開催された
W杯を経験し、今年度もほぼ同じメンバーに強力新加入選手数名を加えた布陣で継続性ある強化ができており、先日行われた
クラシック・オールブラックスとのゲームでも
13-15 と世界の名プレーヤーたちを相手に地力がついてきているところを証明しています。
昨年よりは好勝負になるのではという期待を持ってVTRの再生ボタンを押しました。
まず目に飛び込んできたのは、
HO マクアイザック選手、
LO キャンベル選手、
SO ノートンナイト選手といった
オーストラリア ワラビーズ正代表の経験者がリザーブスタートいう事実。昨年の
10-71 という結果から考えたら、また若手を多く登用したいという相手チームの事情から考えたら致し方ないところも、
“なめられている” のも事実・・・?!
ただ、スターティングメンバーのFW平均体重は
オーストラリア A 109.6kg に対して、
日本 108.1kg とほぼ互角。
キッチリしたゲームを展開させる上でのひとつの前提条件は満たしていることになる。
しかし、
前半1分。HWL付近で得たチャンスのファーストラインアウト。いきなりのノットストレートのイージーミスで逸機。
前半2分からはスクラムでターンオーバー合戦。
この試合全体を通じて、
日本 3番PR 相馬選手はスクラムでかなりのプレッシャーを受けることに。
以前から思っているのだが、確かにフィールドプレーの鋭さなども加味したら
相馬選手が
日本No.1 PRであるという評価に異論はないのだが、ことスクラムに関してはどうなのだろう?
ターンオーバーやイーブンボールへの仕掛けといった混乱場面からの切り返し・攻撃については、幼少時よりラグビーに親しんでいる列強諸外国チームに
日本は現時点では太刀打ちできないでしょう。安定したセットプレーからの工夫した仕掛けで勝負することが命綱ですが、その大前提であるセットプレーが崩壊してはゲームが成り立ちません。前述したように平均体重で表される体格といった部分では肉薄してきているので、これからはよりその中身が問われるでしょう。
前半6分。
日本 連続攻撃から
SO ジェームス・アレジ選手のDGで3点先制。
これまでの
日本ではあまり考えられなかったスコアの仕方。外国人監督の起用も含めて色々な意味でグローバル・スタンダード化が進んでいる中で、
アレジ選手の存在感の大きさを再認識。
そう言えば、短い時間ながらここまでゲームを見た中で、攻撃のアクセントになっているのは
FL ハレ・マキリ選手、
CTB ライアン・ニコラス選手、
FB ショーン・ウェブ選手と全員外国籍の選手・・・。
外国籍選手の起用に基本的には賛成の立場ですが、Jリーグでエースストライカーを筆頭に攻撃陣のキープレーヤーを助っ人外国人が占めている現状の
サッカー日本代表チームの得点力不足を思うと複雑な心境・・・。
前半9分。負傷により
オーストラリア Aのスタンドオフが
ルーカス選手から
サム・ノートンナイト選手に交代。経験豊かな司令塔を得てここから
オーストラリア Aが加速。
早速
前半13分。それまで
オーストラリア得意のSOからのインサイドへのリターンパスを
日本はSH・FWのインサイドアップDFで止めていたが、そこに
LO 北川選手の意識が向きすぎたところで、
オーストラリア A SO ノートンナイト選手が判断よく
日本 CTB ニコラス選手をインサイドステップでかわしてラインブレイク。
CTB トゥリヌイ選手につないで逆転のトライ。
3-7。
前半19分。敵陣10mライン付近の左マイボールスクラムを一気のプッシュでターンオーバーされてしまう・・・。そこから
オーストラリア Aはサイドアタック。できたラックから左オープンへ
SO ノートンナイト選手の長いパスで攻撃。このパスで
日本
CTB陣にマークが重なってしまうミス。
⑫ → ⑬ のパスで
トゥリヌイ選手がブレイク。つないで
FB マーク・ジェラード選手がトライ。
3-14。
DFのコミュニケーションミスはこのレベルの試合では命取り。それを引き出した
ノートンナイト選手の判断・パススキルは秀逸。
前半23分。
オーストラリア Aがラインアウトから連続攻撃。
5次攻撃までは
日本の前に出るDFが機能。6次でまたまた
ニコラス選手・アレジ選手のコミュニケーションミスで大きくゲインされてしまう。
前半25分のシーンも同様に
ニコラス選手がらみ。自陣G前のピンチなのに前に出られず前に仕掛けてくる
ノートンナイト選手に内側でゲインされてしまう。個人の判断・チーム戦術・思いきりの良さといったプラスアルファ要素のバランスが悪くなっている印象。
その直後の
前半27分。
LO 大野選手・HO 青木選手・SH 田中選手・WTB 遠藤選手が
オーストラリア Aの2次攻撃に対してよく前に出るプレッシャーDFでスローフォワードを誘うことに成功しターンオーバー。お見事!
前半31分。
アレジ選手がPG失敗。勢いに乗り切れない。
そこからのドロップアウトを
オーストラリア A FB ジェラード選手が
日本サイドのインゴールまで蹴り込むロングキック力!
そこからの
日本ボールドロップアウトから
オーストラリア Aがカウンターで連続攻撃。
オーストラリア Aに展開されるとインサイドのDFが薄くなり、インサイドステップで簡単にゲインされてしまう。最後もラックサイドのDFがいなくなり、
SH ジョシュ・ホームズ選手が突破。
LO キムリン選手につないで中央にトライ。
3-21。
前半39分。
日本陣10mラインを少し入ったところで
日本がペナルティ。
オーストラリア A FB ジェラード選手 (キッカーでもある) が残り時間をレフリーに確認した上でタッチに蹴り出しトライを狙う。
点差・地域・時間帯を考えたら普通ならばPGを狙う場面。なめられている・・・?!
この絶対に守らなければならない場面。ラインアウトからの
オーストラリア Aのオープン攻撃に対して
WTB 遠藤選手のドンヅメDFから
FB ウェブ選手のパスカットでターンオーバー。
残り時間ゼロを告げるホーンが鳴った瞬間に
SO アレジ選手が、自陣G前にもかかわらずオープンサイドへキックパスの冒険プレー。たしかにこの時、大外でオーバーラップ状態はできていたが・・・。
キャッチした
LO 大野選手がカバーDFに来た
CTB トゥリヌイ選手当たろうとした瞬間にノックオンの痛恨ミス。
このターンオーバーから
オーストラリア Aが反撃。最後は
LO キムリン選手にラックサイドを破られ
LO ハンフリーズ選手がトライ・・・。
日本 LO 北川選手の
キムリン選手に対する足首に飛び込むタックルが不発 (スキル的に未熟すぎる・・・?!)。
SH 田中選手が吹っ飛ばされてのトライは残念。
3-28。
色々な要素が絡み合っているものの、結果的にここでゲームオーバー。挑戦的なプレーは評価するが、果たしてあの地域であの時間帯で選択すべきプレーだったかどうか・・・。
ハーフタイムのスタッツでは、
“ラインアウト成功率 8分の3” が目立つところ。やはりセットプレーの安定は
日本勝利には必要不可欠。
そして後半。開始早々に
オーストラリア A FB ジェラード選手のダイレクトタッチでのラインアウトからチャンス。
SO アレジ選手 → CTB ニコラス選手のシザースプレーで突破。オフロードでつないでラック。
反則アドバンテージを得て相手G前まで攻めるも、
ノートンナイト選手にインターセプトをくらい逸機。
アレジ選手がPGを沈めて
6-28。
差をつめたと思ったら、
後半4分。10mライン付近スクラムから
アレジ選手のキックを
ノートンナイト選手にチャージダウンされ、そのまま拾って走られ失トライ・・・。
6-35。
後半7分。敵陣22mライン内の
日本ボールラインアウトから左オープンへ
ブラインドWTB 遠藤選手ライン参加のサインプレーでG前までゲイン。ラックから
PR 西浦選手が走りこんでサイド突破を狙うも
SH 田中選手とタイミングが合わずにノックオン・・・。
ラインアウト時の反則に戻って、
アレジ選手のPGで
9-35。
この場面に象徴されるように、この試合を通じてFW選手の走りこむタイミングやボールを持ってのランニングスキル・スピードに、
オーストラリア AのFW選手たちと比較して大きな差が・・・。
後半13分。ラインアウトからの展開で、
日本 CTB ニコラス選手が高いタックルで
CTB トゥリヌイ選手を止められず・・・。次のラックで
LO 北川選手がオフサイドの反則。ピンチを招くも、
オーストラリア A PR シェパードソン選手がラインアウトモール内でラフプレーをしていたことが発覚し、ピンチ脱出。シンビン (一時退場) も課され、数的優位の状況に。
その状況も活かしつつ
日本は連続攻撃からオーバーラップのチャンスを作るが、外側の選手が前に出てくる
オーストラリア AのDFのため、インターセプトを恐れ外側に展開できず・・・。相手のしたたかな術中にはまっている感じ・・・。
後半18分。その流れを変えるために選手交代。
No.8 箕内選手 → 菊谷選手、
LO 大野選手 → 谷口選手、
WTB 小野澤選手 → クリスチャン・ロアマヌ選手、
FB ウェブ選手 → ブライス・ロビンス選手とインパクトプレーヤーを投入し大幅チェンジ。
直後に
オーストラリア A No.8 サルヴィ選手がプロフェッショナルファウルでシンビン。
オーストラリア Aは2人足りないピンチ。それなのに、
日本は敵陣22mライン付近中央スクラムからのサインプレーを失敗・・・。
後半20分。敵陣22mライン付近左ラインアウトでモールドライブ。数的不利の
オーストラリア Aがたまらずモールコラプシング。アドバンテージを得ながら右展開し、
SO アレジ選手がDFライン裏にグラバーキック。タイミングよく走りこんだ
CTB 今村選手がキャッチしてインゴールに飛び込むも、飛び出すタイミングをオフサイドと判断されトライは認められず (スロー再生でチェックするとオフサイドではない!) 。
アドバンテージで残っていたPKからタッチに蹴り出し、G前5mのラインアウトモールを押し込み
192cm・125kg 巨漢LO 谷口選手がトライ。
14-35 と反撃開始。
後半24分。トライ直後のキックオフから、この日一番のつなぎで相手G前まで前進。
WTB ロアマヌ選手・No.8 コリニアシ選手・FL マキリ選手・FB ロビンス選手の柔らかい身のこなしでの突進が効果的。
全員、外国出身の選手 (コリニアシ選手は帰化して日本人) ですな・・・。
その一連の流れの最後、
LO 北川選手・WTB 遠藤選手のトヨタコンビでのライン裏へのキックは疑問。
攻・防 2人ずつのイーブンの状況だったがシンビンで数的に上回っているのだから、勝負を焦って蹴ってしまわずにキープして連続攻撃につなげるべきだった。そう思う根拠は以下のとおり。
・事実サポート(カバーリング)の人数は日本の方が多かった。
・遠藤選手はキックチェイス局面において、スピードで振り切れるタイプの
WTBではない。
・キックをするということはキープしていたボールを手放すことになり、
そのあたりのリカバーはプロ集団のオーストラリア A はかなり堅い。
事実、しっかりとリカバーされてタッチに蹴りだされてしまい、チャンスは潰えたかにみえた。しかし、直後の敵陣22mライン付近左ラインアウトからロールしながらのドライビングモール。サイドに残っていたDFを巻き込んだ瞬間に
FL 菊谷選手がブラインドに持ち出し突破。G前10mまで持ち込みラック。クイックボールアウトで右オープン側へ
SH 田中選手 → FL マキリ選手。
マキリ選手が2人のタックラーに身体を預けながら絶妙のオフロードパス!
谷口選手が2本目のトライ。
21-35。
残り15分のところで、またまた勝負が分からない点差まで持ち込んだものの、期待が膨らみかけた直後のキックオフから
WTB ロアマヌ選手が積極的にアタックしたところでノックオン・・・。
そのスクラムをホイールしてプレッシャーをかけることに成功。
オーストラリア A BKのノックオンを誘い見事なカウンター。しかし、ラックから
巨漢LO 谷口選手がサイドを突いたところで、
オーストラリア A PR マアーフ選手・LO ハンフリーズ選手の狙いすました2人がかりのタックル (非常にスキルフル!コンビネーションも見事!) が炸裂しターンオーバー・・・。
その流れのまま、次のラックから
オーストラリア Aが左へ展開。
SO ノートンナイト選手 → WTB ファイニフォ選手が爆走。ここで、
日本サイドのマン・オブ・ザ・マッチ
FL マキリ選手が痛恨のDFミス (外側に攻撃側選手がいないのに外にずれてしまい、マークすべき
ファイニフォ選手に内側を突破される・・・)!22mラインを突破されたところでリターンパス。受けた
ノートンナイト選手が絶妙のバックフリックパスで
SH フィブス選手へ。さらに
FL ホジスン選手 → LO キムリン選手とつながれトライ・・・。
21-42 で勝負あり。
その後、
日本も反撃するがスコアは動かずノーサイド。
昨年よりは善戦し、勝てる可能性を嗅ぎ取れるぐらいまでは近づけたように思うが、現実的に勝利を掴めるレベルにはまだまだといったところでしょうか。
具体的な差として感じたのは、
・DF時のバッキングアップの層の厚さ
・個々のタックルミスの頻度
・タックル → ラックになる際のボールへの絡み
・FW・BK問わずランニングスキル (特にFW)
・勝負どころでツボを押さえる集中力
・・・といったところでしょうか。
それでも前述したように、確実に昨年よりはレベルアップしているので、これからの4試合が楽しみになってきました!